君が嫌いな僕

6/11
前へ
/11ページ
次へ
「木崎さん、一緒に帰らない?」 それから僕はたまにそうやって誘ってみることにした。 でももちろん彼女は返事すらすることなくそれを無視し続けていた。 周りの女子や友達には、「どうして」と聞かれたけど どうしてなのかは僕が聞きたいくらいだった。 ただ僕は彼女の声が聴きたいだけだった。 周りはずっと騒ぎ続けていたけど、 木崎さんは相変わらず静かに本を読んでいた。 僕も幸いなことに本が好きでよく読んでいたけど、 でも彼女がどんな本を読んでいるのかは、 いつもブックカバーがついているからわからなかった。 僕はいつもミステリーとか歴史ものとか、そういうのを読んでいるけど、 きっと木崎さんは女の子らしい本を読んでいるのだろうな。 いつか彼女の口から何の本を読んでいるのか聞ける日が来るのだろうか。 それは今は誰にもわからなかった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加