君が嫌いな僕

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彼女は隣に座った僕に全く気が付かなかった。 気が付かないまま本を読み続けている横顔は 太陽の光がキラキラと当たって、とてもキレイだった。 そのまましばらく見とれていたい気持ちにもなったけど はたから見たら気持ち悪いなとおもって 本を選びに行こうとすると、 彼女の前には本が数冊置かれていることに気が付いた。 ブックカバーのついていないその本には、 カタカナで名前が書いてあった。 たしかあれはドイツの作家の名前だ。 なるほど。 海外の作家の作品を読んでいるのか。 なるべく彼女と共通の話題を作りたかった僕は、 図書館がおすすめしていた海外の小説をテキトーに手に取って 彼女の隣にまた座りなおした。 やっぱり彼女は僕に気が付かなかった。 気が付いてほしい気もしたけど、 でも気が付いたらきっと彼女は帰ってしまう。 僕はそのままそーっと本を開いて、行ったことのない国の話にのめりこんだ。
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