初恋

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 彼女との連絡は三日に一度くらいになっていた。僕は落語の話、彼女は星の話。きっとお互い、相手と思いを共有できることを願っていたんだけど、お互い同じ熱量で応えることが出来ず、ただの報告に終始するようになった。  僕は彼女の話を、また星の話か、という気持ちで聞いているばかりで、先輩と過ごす時間のような楽しさやワクワクや世界が広がる感覚を、彼女との間に見いだすことができなかった。  彼女から別れようと言われた時、それでも僕は焦った。ほんの三ヶ月前、あんなにも心を焦がして、絶対にこの気持ちは変わらないと誓ったことを思い出して、その相手が今、僕から離れようとしている現実を、とっさに受け入れることが出来なかった。  彼女は言った。会えなくて毎日淋しかった。側にいる人を好きになってしまった、と。  ふいに先輩の顔が頭に浮かんで、彼女を責めることも、引き留めることもできなくなった。    新しい毎日が与える刺激は強すぎて、僕は彼女と過ごした切なく儚い濃密な三週間を、知らず知らず過去の記憶として整理してしまっていた。  彼女に会う資金を貯めるはずのバイトは、毎日入れようという当初の意気込みを修正して、週末だけに縮小してしまっていた。バイト代が入る前に来たゴールデンウイークは、当然ながら彼女に予定の打診すらしなかったし、その後得たわずかな収入も交際費に消えた。  スマホのカレンダーを見返しながら最低な自分を振り返っていて、何の気なしに日付を数えてみた。  つき合い始めから別れた日まで、ちょうど100日だった。  外は篠突くような梅雨の雨。  たった100日。それさえも全うできなかった事実が、強い雨音に叩きつけられるように、僕の心に冷たく張りついた。 〈終〉
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