憧れの100点

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憧れの100点

お父さんがニュースを見て呟いた。 「また政治家が謝罪してるのか。誤魔化したのがバレて酷く追及されてるな」 「どういうこと?」 「男には退けない時がある。そこで、この人は誤魔化して逃げたんだよ。やってしまった事は仕方が無い。反省して、次に繋げるのが大事なんだ。まあ、お前にはまだ難しいかもな」 この時は、お父さんの言ってる意味が分からなかった。 そして、次の日。 算数のテストが返ってきた。点数は10点。先週、30点だった算数のテストを見せて、お母さんに怒られたばかりだ。 テスト用紙の一番下には『もっとがんばりましょう』と書かれている。 焦った僕は必死に考えた。 頭の中に、お父さんの言ってた誤魔化すという言葉が浮かび上がる。そうだ、誤魔化そう。バレなければいい。 10点に0を足してみた。おお、憧れの100点だ。 でも、回答にはマルが一つしかない。このままではバレてしまう。 無理やり、バツをマルに変えてみた。いびつなマルになってしまったが、これで完璧な100点。 あとは『もっとがんばりましょう』の文字。100点なのに頑張りましょうって、おかしい気がする。そこで、文字を付け足してみた。 『もっとがんばりましょう。120点をとれるくらいに』 ……誤魔化せただろうか? 男には退けない時があるって、お父さんが言ってた。不安だけど、これをお母さんに見せよう。 そう覚悟を決めた瞬間、学級委員長の女子が信じられないことを口にした。 「先生。最後の問題は正解してるはずなのに、バツになってます」 「僕も」 「私も」 クラスメイトたちが次々に手を上げる。 「あら、本当ね。ごめんなさい。じゃあ、この問題はみんなマルにしましょう。テスト用紙を回収するわね」 …… …… えっ? 結果、先生に怒られ、お母さんにも鬼のように怒られた。 学校では一週間トイレ掃除、家では一ヵ月間おやつ抜きの罰が与えられる。 僕はお父さんの言っていた意味を、身をもって理解した。 【完】
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