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「二人とも本当に仲が良いのね」
小さな言い争いを繰り広げていれば、夕咲が落ち着いた声で会話に参加する。よく通るその声に、二人は動きを止めた。
「お、夕咲ってば嫉妬か?」と律夜がニヤニヤと悪い笑みを浮かべた。
「少し羨ましい気はするわ。私は男の子じゃないから、二人と同じようには騒げないもの。ちょっとだけ、妬いちゃうな」
どこか憂いげな微笑に、星來も律夜も目を丸くした。互いに顔を見合わせ、複雑そうに眉を顰める。
夕咲はあまり自分の気持ちを口にする方ではない。こうして素直に胸の内を吐露するのは珍しい。だから余計に、二人は返答に困ったのである。
「はぁ~……夕咲にそういうこと言われると弱いんだよ……」
律夜が頭を掻きながら困ったように目を逸らした。星來も同意するかのように、困ったような顔をして一度首肯する。
「夕咲はこのあと暇?」
「えぇ、特に用事はないわ」
「じゃあ、百鬼も一緒に帰ろうよ。帰るっていうか、たぶん律夜に連れまわされるだろうから、すぐには帰れないけど」
「当たり前だろ~!せっかくなら寄り道していこうぜ!」
眉をハの字にして星來が律夜を一瞥する。律夜は胸をポンッと叩き、当然と言わんばかりににっこりと歯を見せた。
「そのテンションからいくと、駄菓子屋かしら」
「まぁ、俺たち三人ならだいたいそうだよね」
星來が頷く。
三人は菓子好きであり、それが共通点で仲良くなったとも言える。何気ない話題が尽きないため、雑談をしながら共に帰宅することが多い。そのうえ、帰り道が途中まで同じであるため、必然的に三人で下校することになった。放課後に部活動や委員会が無い時は、大抵三人で街の駄菓子屋に向かうことが多い。
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