Daydream1:過去からの呼び声

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「ん?あれ、なんだろ……?」  その時、不意に律夜が視線を坂の下に向けた。 「え、なに?」と、星來がその視線の先を辿る。  そこにあったのは、混凝土で形成されたトンネルだった。苔や蔦がそれを装飾し、古めかしい雰囲気を演出している。夕方の世界にぼうっと浮かび上がるそれは、まだ辺りは明るいというのに、随分と濃い影を帯びていた。まるで異世界の入り口にも見えるそれは、毎日通っている帰り道だというのに初めて見るような気がした。 「あのトンネルがどうかした?」と星來が首を傾げた。 「いや、なんかトンネルの方で光ったような気がして」  律夜が目を細めてトンネルを凝視する。先程この目に捉えた光は、見つけることができなかった。 「津雲くんのことだしきっと気のせいよ。津雲くんのことだし」 「夕咲はもうちょいオレのこと優しく扱って!」 「……でも、あんな所にトンネルなんてあったかしら?」 「さぁ?あんまり意識したことがないから……」  夕咲も星來もトンネルに違和感を覚え、思わず足を止めてそれを見つめる。  小さなトンネルだ。  トンネルというより、高架下と言った方がしっくりくるだろう。高架下にしては暗く長い気もするが。車はもちろん通行不可のようで、小さな抜け道のようであった。 「ちょっと見てくるわ!」 「あ、ちょっと律夜……!」  自転車をその場にとめて、律夜は駆け出した。雑草に彩られた階段を跳ねるように下りていく。傾斜の緩い坂道の下にあるそのトンネルまでは少し距離があり、近づいてみなければトンネルの詳細を調べることはできない。そう思い立った律夜は、足早にトンネルへと向かうことにした。 「結構怖がりなのに、ああいうのは積極的に見に行くのね」  好奇心に駆られて坂の下へと向かった律夜を見て、夕咲は呆れたように呟いた。 「ほんとだよ……何かあったらどうするつもりなんだか」 「あら、蓮水くん怖いの?」 「いや、そういうわけじゃないけど……」  星來は苦い顔をした。  確かに怖い。というより、微かに嫌な気配がしたのだ。自分には霊感などないと思うが、行かない方がいいと直感的に感じた。自分の中の何かが、あれは危険だと告げているような気がする。
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