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「それは蒼斗もでしょ」
へらりと笑いながら結月は言う。一瞬だけ不思議そうな色を滲ませた三白眼が、結月を見つめた。
「いや、オレは変人じゃないんで比べるまでもないっすねぇ」
「は? 何言ってるの」
「オレはこのサークル一番の常識人なんで、変人じゃないっす」
「自覚ないのかよ、怖っ」
わざとらしく怯えたような表情を作る。結月は蒼斗から少し距離を取った。蒼斗は呆れたような顔をして、再び三人に視線を送る。
「三人には、オレたちを見習ってほしいもんですねぇ」
「ははっ、言えてる。……でも、まぁ――」
結月は騒ぐ三人を一瞥する。
かつては自分一人しか居なかったこの部室には、こうして自分以外に四人の人間が居る。他サークルに比べれば人数が少ないことに変わりないが、あの閑散とした部屋がこうも賑やかになったことは、結月にとって素直に嬉しいことだった。
「賑やかでいいんじゃない?」
仮初の日常を守る部屋に、嬉しさが滲むその声がそっと落ちた。
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