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サイノの住む竪穴式住居はたくさんの柱を使った豪邸だ。入口には毛皮のカーテンがあり、なかは沢山の翡翠で装飾されている。彼の作品は女子たちから絶大な人気があり、彼の名は歴史に刻まれるだろうといわれている。
パフがなかへ入ると、奥の作業場でサイノは、可愛らしいリスを模した土偶を作っていた。かたわらにいる女がその作業を眺めている。彼女はサイノの妻で、集落で1番可愛いとされる絶世の美女だ。その美しさは後世に語り継がれるだろうといわれている。
「土器を作った。ちょっと見てくれ。意見が聞きたい」
パフが言うとサイノは考える素振りを見せた。
「ああ、今日はマツリの日か。いいよ。見せてみな」
「ありがとう。これで女の心を射止められるか教えてくれ」
目の前に置かれた禍々しい物体にサイノは閉口した。
これは自身にたいする嫌がらせなのかと彼は思った。呪術めいた力で自分の名声を潰そうというのか。あるいは長年の独り身で憎しみに狂ってしまったのか。それとも冗談で土っ器りをしかけているのか……。なんにせよ色々と論外だ。首領がみたら首をはねるかもしれない。とりあえず話を聞こう。
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