土器土器マツリ

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焚火(たきび)のなかに、川で採ってきたヤマトシジミをついでに放りこんで、狂ったように食いながら焼きあがりを待つ。 昼頃になって、土器と言っていいのかよくわからないなにかが完成した。いろいろといびつだが、迫力満点。会心の出来だ。 彼はいままで15回ほど、この習わしに挑戦しているが、成功したことは一度もない。顔が234番目にかっこいいからというのが主な断られる理由だ。  ちなみにかっこよさの順番は人数分以上あり、パフの次にあたる233番目にかっこいいとされているのは首領(しゅりょう)が飼っているフナだ。魚類や哺乳類に顔面レベルで負けている彼は、素晴らしい土器で女の気を引くしかない。この焼きあがった物体には並々ならぬ想いがあるのだ。  しかし、一抹(いちまつ)不安(ふあん)が残る。もし万が一、これが吐き気を(もよお)すほどのゴミ屑だったらどうしよう。おそらくいままで、この世に存在しなかったであろう形状をしている。斬新ではあるが、庶民的ではない。相手に渡した瞬間に、貝塚(かいづか)に捨てられてしまうかもしれない。実際、自分の作った土器が15個、貝塚で永眠しているのだ。 そうだ。一回、彼に見てもらおう。そう思った彼は土偶職人(どぐうしょくにん)のサイノのもとへ向かった。
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