きっかけ

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「じゃあ、また呼んでください」  リナとホテルの前でそう言い合うと、尚之も、 「う、うん。また」  言うと、リナは手を振って、来た道を戻って行った。一人残された尚之はゆっくり歩いて駅を目指した。  なんだかまだ身体が火照っている。でも、まだ足りない気持ちも合わさっていたが、とりあえず、今日の胸の高まりを残したまま、ゆっくりしたいと思った。  自宅に着くと、玄関を開ける。すると、中からテレビの音が聞こえた。尚之は靴を脱ぎ、リビングの扉を開けると、そこには恵がいた。恵は尚之を見つけると、 「おかえりなさい。今日は早かったんですね」  そう言うと、ジャケットを受け取ろうとすると、はっと、咄嗟に恵の手を振り叩いた。すると、恵は驚いた顔をして、それを見た尚之もしまった、と思うも、引き返せず、 「ジャケットは良い。俺は疲れてるから風呂入って寝る」  と言うと、冷蔵庫の方へ行って、缶ビールを取り出すとそれを持って寝室へと向かった。  危なかった。ホテル独特のソープの香りが絶対する。それを思ったら、恵を拒絶してしまったが、いけないことをしたのは自分だ。その罪悪感が恵を見たら出てくるのは否めなかった。  それから寝室のベッドに腰を掛けると、ビールを煽り、そのままスーツをハンガーにかけると、そのまま風呂へ向かった。  尚之は風呂でシャワーだけさっと浴びて、家のボディーソープを使って、残り香を消すと、すぐに風呂を上がり、寝室へ行くと残りのビールを飲んだ。  ベッドの傍にあるサイドボードに置いたビールを取ると、残りを飲んだ。  それからパジャマに着替え、布団に潜る。恵は寝室にまだ来ない。きっとテレビをまだ観ているんだろう。  時間にして今はまだ十時。専業主婦の恵はまだテレビドラマでも観ているのだろう。早く帰ってきて良かったと尚之は思った。  今恵の顔を直視できない。そう思うと、尚之はベッドに横たわってすぐ、寝息を立てた。久しぶりの射精と、初めての浮気に疲れを感じたのは間違いがなかった。    
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