会いたい

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 尚之は外回りをして、その一件が終わったあと、近くのコーヒーショップへ入った。そこはWi-Fiがあるため、パソコンを開け、書類を作りながら、一息ついているところだった。  尚之はそれに集中していると、もう今の時間は午後六時。  もう就業時間を過ぎていた。会社に一度帰らなければいけなかったが、早く家に帰ることも躊躇われたため、アイスコーヒーを飲みながら、ゆっくり書面に向き合っていた。  尚之の席はカウンター席で、窓際である。そこにはコンセントもあるから、そこに座っていたが、ふと目の前の窓に目をやった。  すると、どこかで見た女性が通りがかるのが目に入った。  ――あれは、リナだ。  見間違うことのない、昨日身体を合わせたリナに間違いなかった。尚之はそれを見て、緊張するも、とりあえず、リナがどこに行くのか、顔を少し隠しながら見ていた。  すると、目の前はタクシーターミナルになっているのだが、尚之は、そのタクシーターミナルのもっと奥にある銅像の前でリナが止まった。  尚之はなぜか、見てはいけないものでも見るかのように、じっとリナを見ていたが、しばらくすると、中年の冴えない男が、リナに声を掛けた。そこまではなんとなく見えるのだが、何を言っていて、どういう顔をして話しているのかはわからなかった。  それからリナとその男は二人で肩を並べて、飲食街に歩いて行った。 (誰だ……)  尚之は気になって、悶々とした気分になる。その時、尚之ははっとして、スマホを取り出した。  ドキドキメールを開き、そのアダルトの投稿欄を見た。  すると、あった。リナの投稿が。今から一時間前に投稿されている。ドキンドキンと胸が跳ねるのを抑えきれず、尚之は震える手で、スマホのチャットアプリを開くと、リナにメッセを送ろうとした。  ――またリナは援助交際をしているのだろう。  でも、なかなかなんて言って送ればいいかわからない。会ってからメッセを送ってはいない。そう思うと、なんて打てば良いかわからなかったが、自分の目の前で、リナと男がどこかへ行ったのを見てしまった今、なんとかして情報が欲しかった。  尚之はコーヒーを啜って、 『昨日はありがとう。今日は何してるの?』  と送った。尚之は送ったあと、どっと疲労感を覚えるが、ため息をふたつ漏らした。  それからまたパソコンに向かうも、スマホの連絡がないことが気になってしまい、今日はもうこのまま会社に戻ろうと片付けを始めた。  尚之はとぼとぼと、会社に戻ると、もう時間は七時半を過ぎていた。自分のデスクに座り、パソコンを置くと、喫煙所へ向かった。  会社にはまばらに人がいた。それでもがらんとした会社の静けさに、自分の心の揺れが、響いてしまいそうだった。
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