第一章 告解の後

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第一章 告解の後

優等生だった滝川が両親を泣かせたのは これが初めてだった。 胸の奥が疼く。 一方で、30年以上も秘めていた想いを 吐き出すことができて とてもスッキリとした気分でもあった。 なんとも言いがたい、沈む気持ちと爽快な気分、 どちらも滝川は感じている。 「・・・・・・おまえ。」 全てを聞き終えた父親が、ようやく口を開いた。 途方も無い告白は、反抗らしい反抗をしなかった息子の 内に隠し持っていた核爆弾みたいなものだった。 一旦爆発すれば、 周囲を巻き込んで四方を焼き払い、後遺症に苦しむだろう。 だから滝川は、それを一人で ひっそりと抱えて生きていくつもりだったのに。 やはり彼にそうさせたのは アキコの存在が大きい。 と、どこか他人事のように滝川は思っていた。 「美咲さんのお腹の子は、本当に隼人の子供じゃないのね?」 母の問いかけに頷く。 「ああ。僕らは仮面夫婦もいいところだった。 新婚旅行以来、一切彼女には触れていない。」 「だからと言って、手術には金が必要な事には変わらない。 金の工面はどうする、隼人。冷静になれ。」 そう言う父の声は震えていた。 見ていられず黙って頷くと、彼は実家を出る。 濃い紫色の夕焼け空は、 どこか毒々しかった。
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