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<1章>
いつもの朝、
いつもの通勤バスに私は乗った。
不景気のあおりを受けて、本数が減らされてしまい
乗れるバスは限られている。
不快だが仕方ない。
私は朝からいつもの満員バスに揺られている。
何とか左右のぶれに負けずに
つり革に掴まって踏ん張っていると
私が乗った次のバス停で、
いつも会う彼が乗ってきた。
名前も知らない彼。
私より15センチほど背が高く
アラフォーの私よりも恐らくちょっと年下で
良いところの会社に勤めているらしく
サイズの合ったスーツをきっちりと着て
しゃんと立っている。
彼が人波に押されて、
フラついているところを見た事が無い。
体幹がしっかりしているのだろう。
あっさりとした顔立ちだが、
まつげがちょっと長くて、可愛い。
毎朝彼を見るのが、私の楽しみだった。
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