<5章>

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<5章>

体が反転し、真後ろに立っていた男と向き合う。 40代半ばだろうか、小柄で不潔な感じのする男だった。 この男だろうか、痴漢は。 そんな事を思っていると、 一瞬バスが揺れたその隙に 例の彼が、私の身体を支えて 真後ろに回りこんだ。 「え?」 思わず口に出して赤くなった私に 「俺が、盾になりますから。」と小声で囁かれる。 “盾になる。” その言葉通り、彼は私には触れないよう そして誰も私には触れさせないよう バスに乗っている間中、私をガードしてくれていた。
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