PROLOGUE:01 SIDE / Eugene

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 ふと小さな頭からヘッドフォンを外して、腕に身を伏せ、押し殺した声で泣いていた。彼女は泣き虫で孤独な人みたいだったから、危なっかしいとも感じて目が放せなかった。魔法使いの彼でも彼女の心までは癒せない。  目に包帯をした彼女の横顔は凛と澄んで、どの負の感情も示してはおらず無に等しい。白痴美を湛え、儚く、消え入りそうだった。それも自然なこと。彼女は(よみがえ)ったのだから。未練の中、喪失の痛みを味わったのだろう。 ――(こいねが)うように幽玄の悲しみを歌っていた。指先が囁き、手の表情が啜り泣き、震える。  彼の――胸中の何かが壊れる感覚がした。恐らく、その瞬間から深い罪悪感に飲まれ、彼は彼女のことしか、考えられなくなった。生まれた感情を抑圧し、逃避に走るように、彼は信じてもいない神様に祈り続けている。
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