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途中あの車が、まだ立往生していたので、瓦礫をどかす手伝いをした。
携帯も繋がらず、どこへ行けば良いかも分からなかったから。
泥まみれになりながらも、何かを忘れるように作業に没頭したかったのかも知れない。
車内には女性が乗っていた。
おそらく夫婦なのだろう。
「済みません。家内の陣痛が始まってしまい……」
「え? た、大変じゃないですか! 今生まれたらどうするんですか?」
「それで、急いで病院へ向かいたくて。手伝ってくださり、ありがとうございます」
「お礼なんて良いですから、早く向かってください!」
30分くらい、瓦礫と格闘していただろうか。
どうにか、車を出発させ、俺はそのまま、座り込み、呼ばれるように天を見た。
祈りも、救いも、関係なく、半ば本能のように天を仰ぎ見たんだ。
今まで見たことのない、満点の星空。
絶景が夜空に広がっていた。
……同時に、直感した。
ここだけではない。こんなにも多くの人が、星になったのかも知れない、と。
未曽有の大災害だったと知ったのは、何時間も後のことだった。
何故なら、俺達にはニュースさえも届かなかったのだから。
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