100%の愛をきみに

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* 「はぁぁぁぁ」  俺が紳士になってから五日が過ぎる。  俺はすっかり葉桜に姿を変えた桜の木の下でうなだれていた。  木には花びらはひとつもないのに、中庭の地面は相変わらず薄汚れたピンクで汚い。  真面目に掃除をすることにしたつもりだったが、気づいたら優理花のことばかり考えてしまって、結局はかどらないんだ。  生徒指導の教師も、俺が紳士になったことで相当上機嫌な様子を見せたくせに、中庭が綺麗になるまで掃除をするという難題をチャラにしてくれることはなかった。  だからといって、こんな心境のままじゃあ、今日も掃除がはかどりそうにもないけれど。  ……何だよ、せっかく紳士になったっていうのに何が足りなかったって言うんだよ。  そのとき、中庭から見える一階の廊下の奥から優理花が歩いてくるのが見えた。  俺のクラスの女子、浜田と一緒だ。  それを見てどういうわけか、俺はとっさに校舎の壁に背をつけるようにしてその場にしゃがみ、優理花から見えないような体勢を取る。  別に隠れる必要はなかったのだが、さすがに短期間で二回も告って玉砕していることから、気まずいものがある。  そのとき、中庭が静かだということもあり、俺の背後頭上にある窓から優理花と浜田の会話が聞こえてきた。 「そういや優理花って、うちのクラスの多田に告られたって本当?」  そのとき、不意に浜田が俺の名前を口にして思わず背筋が伸びる。 「……うん」  この会話を聞いてしまっていいのだろうか。  そうは思いながらも、今、ここから場所を移動しようとするならば、もしかしたら二人に俺がここにいることを気づかれてしまうかもしれない。  だから悪いなと思いながらも、続きを聞きたいような聞きたくないような会話に耳をそばだててしまう。 「あれ、絶対優理花に本気だよね。一度金髪にした頭を黒にして、服装まで真面目くんになって」 「そうね」 「正直、今の方がカッコいいと思うけどね~。で、優理花は、どうするの?」 「……え? どうって?」 「多田の告白。超愛されてるのに、付き合わないの?」 「うーん。いくら見た目が変わっても、中身は一緒でしょ?」 「うわぁ、優理花厳しい~」 「そう? 普通じゃん。ついこの前まで不良だったのに、どこまで本気なのか怪しいし」  俺は不可抗力で聞こえてきた優理花の言葉に、まるで頭を金棒で殴られたような衝撃を受けた。  そうか……。俺は見た目を変えたことで、紳士になったつもりでいた。こうすることで、自分の本気度をアピールできていると信じていた。  けれど、当たり前だけど、それだけじゃ不充分だということだ。  どうすれば……。一体、どうすれば俺の気持ちは彼女に伝わるのだろう……?
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