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「ねえ。リュウジくんは確かギターしてるんだよね? バンドやってるの?」
朝の日差しがさっと窓に差し、その日差しが詠の顔を反射する。整った顔立ちをより明確に映し出され、龍二はどきりとしてしまう。憧れの人がこんな近距離にいることが龍二にはまだ慣れず、緊張しながらも、
「は、はい。しています。軽音楽部のメンバーでしています。僕意外は他のクラスなんですけど、ギター二人、ボーカル、ベース、ドラムの五人です」
「へえ。良いね。どんな音楽やってるの?」
「えっと、コピーが中心なんですけど……その。メタルのバンドの曲ばかりやってます。あの、いや、えっと! 僕はSOULINGの曲がやりたいんですけど……。軽音楽部って、部員が少なくて。気が合う人と組めるなんて、なかなかなくて……それで、妥協して、メタルをやってて。僕は、オルタナティブ系が好きなんですけど。その、なんかすみません……」
しゅんとして、背を丸める龍二に、優しく微笑み返す詠。
「良いじゃん。メタルはギターの練習にもなるしさ。リュウジくんはリードギターなの?」
「……いえ、僕はバッキングです」
「そっかあ。俺たちSOULINGもギター二人だったけどさ。俺はいつも上手で一人でいるじゃん? リードギターだから勿論ソロはピンスポとか当たるんだけどさ。それはそれで快感だけど。でも、下手で隣にメンバーがいるのって良いなって俺思ってたんだよね」
詠が懐かしそうな顔をして窓の方を向いた。龍二はそれを聞いて、
「で、でも。先生はいつもキラキラしていて、かっこよかったです! SOULINGの曲、僕ほとんど弾けるんです! でも……。バンドでSOULINGを弾きたいな……」
ぼそりと呟く龍二に、詠は背中を軽く叩き、
「俺、軽音楽部の顧問にもなったからさ、もっと部員探そうぜ! それで、もっと軽音楽部を盛り上げてさ、文化祭とかめっちゃ弾けようぜ! 俺も出ちゃおうかな~」
「え! 先生が出演するんですか! そんなの、大騒ぎになりますよ!」
声を上げる龍二をよそに詠は苦笑する。
「って言っても、俺たち、武道館止まりのバンドだから、そこまで知名度ないからさ」
あはは、と苦笑いをすると、龍二はかぶりを振って、それでも明るい表情で、
「もし、それが実現するなら、僕も軽音楽部の活動、頑張ります!」
「ありがとう。俺も教師としてはひよっこだからさ。今日みたいにみんないなくなったりしたら、心折れるかもしれないし、また話そうぜ」
「は、はい! 僕で良ければいつでも!」
龍二は嬉しそうに微笑むと、詠は龍二に握手を求めた。龍二はそれを見て、ぎゅっと詠の手を握った。龍二は、これがギタリストの手か、と思うと、感慨深くなっていた。
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