青春を手に入れろ!

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「あの、櫻木先生ですよね。私、スクールカウンセラーの小野寺美紀(おのでらみき)と申します。先生のこと、理事長に頼まれていまして。えっと、机はこちらになります」  そのスクールカウンセラーの先生は、ボブカットのころっとした顔をした愛嬌のある女性だった。化粧も濃いわけではないし、清潔感のある女性だった。  詠のタイプといえば、タイプなその先生が机まで連れていってくれると、荷物を置いた。 「このあと、校長から挨拶があると思うので、それまで待っていてください。あ、コーヒーは自由に飲んでもらって構いませんよ」  言うと、お辞儀をして自分の席へと戻って行った。  詠は自分の席にファイル立てと、ノートパソコンが一台置いてあるだけで、殺風景だったから、カバンから写真立てを取り出した。  その写真立てに入っている写真は、Beatlesのジョージハリソン。テレキャスターを使った、ロックの神様っていったら、この人だ、と詠は思っていた。  それを遠目で見ると、「よし!」と自分を鼓舞した。  それからしばらくすると、校長が職員室に入ってきて、詠を呼んだ。それから詠は校長の方へ進み、一礼した。 「えー、今日から音楽の担当をして頂く、櫻井詠先生です。皆さん、彼はちょっとした有名人です。ですので、生徒が騒がないように、くれぐれも気を付けてくださいね。櫻井先生、一言お願いします」  詠は呼ばれると、背中をピンと伸ばし、歌うように声を出す。 「はい。櫻井詠と申します。僕はまだまだ若輩者ですが、ロック魂だけはしっかり持っているので、生徒としっかり向き合える教師を目指して頑張りますので、ご指導ご鞭撻の方、宜しくお願い致します」  言うと、拍手が起こった。  詠はこれから新しい生活が始まるのかと思うと、胸が躍った。その反面、忘れられない、音楽のことも、もっと自分で向き合っていきたいと思っていた。  
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