秋の日

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翌日、言われた通り仕事帰りに姉さんに電話すると、明朝の段取りを教えられた。 「そういうわけだから例の女の容姿と服装の傾向を聞かせて。出来るだけ詳しくね。」 そう言われたら、藤峰さんのことなんてほとんどまともに観察していなかったことに気付く。 髪が明るめの茶色でスーツもベージュや白の明るい色が多いから、遠目でも藤峰さんだとすぐにわかる。そのせいで髪の長さやどんなメイクかを姉さんに訊かれても、僕は明確に答えることが出来なかった。 「正道、しっかりしてよ。いくらサユちゃん以外の女には興味ないからって」 そこでハッとしたように姉さんが黙り込む。今、電話の向こうで姉さんは、自分の失言を後悔して唇を噛みしめているのだろう。 そんな後悔を吹き飛ばすように、僕はわざとハハッと笑い声をあげた。 「うん、その通り。サユさん以外の女性なんてどうでもいいから、よく見てもいなかった。でも、それで思い出したよ。藤峰さんは横顔だけはサユさんに似てるんだ。」 「は? 何それ。……もしかしてあんた、サユちゃんに似てるから藤峰を突き放せないの?」 急に姉さんの声が険しくなり、藤峰さんを呼び捨てにする始末だ。 「そんなんじゃないよ。それは断じて違う。」 「……そうだよね。サユちゃんはサユちゃんだもんね。……あのね、実は今日、サユちゃんに電話したの。結婚することになったけど、結婚式に呼べなくてゴメンって。ホントはサユちゃんを呼びたかったんだけどバカな弟のせいでゴメンって。」 「そっか。ゴメン。」 姉さんはサユさんを妹のようにかわいがっていて、一人っ子のサユさんも姉さんに懐いていた。二人はお互いの結婚式に参列することを当たり前のように思っていたはずだ。義理の姉妹になるのだからと。 僕の過ちのせいでこんな風に誰かに迷惑をかけることが、一体いつまで続くのだろうか。 「でも、サユちゃん、すごく喜んでくれたよ。おめでとうございます!って言う声が弾んでた。自分はあんたのせいで破談になっちゃったのに、ホントにいい子だよね。」 「うん。僕にはもったいない人だった。」 少しでもサユさんに相応しい男になろうと努力してきたけど、全然ダメだったな。 今でも僕はこうやって姉さんに助けてもらわなければ、藤峰さん一人撃退することも出来ないんだから。
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