16.お堅い王子の艶事

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「いやぁ、すまないね。驚かそうと思ったわけではないのだよ。ただね、以前わたしは郁にひどく怒られてしまってね」 「お、怒られる?か、会長が……ですか?」 「あぁ。"メイにいい加減なこと吹き込むのやめてください"ってね。わたしはてっきりあの子は多恵さんのことが好きなのだとばかり思っていたのだけど、メイさんのことが好きなようでね。誤解を招くようなことを言ってしまって、申し訳ない」 「あ、謝らないでください!私もずっと多恵ちゃんのことが好きなんだって思ってましたし、もう、全然気にしてないというか、その」 誤解して喧嘩したこともあったけれど、そんなことより今は日野坂くんのお爺様と恋バナをしている気分になってしまって心がとっても落ち着かない。 助けを求めるように緒方さんの方を見ても、彼はお得意の笑顔を見せるばかりで一向に助け舟を出してくれる気配は皆無だ。 話題を変えたい一心で、私はぎこちない引き攣り笑いと一緒に日野坂くんのことを聞いた。 「あの、日野坂くんのマンションが解約されていて携帯も繋がらないんです。どこにいるか、会長は知っていますか?」 「……おや、恵美さんがそこまで手を回していたとは」 「え?め、恵美さんって……日野坂くんの叔母様のことですか?」 「ハハッ、メイさんはウチのことをよく知っておられるようだね」 「いえ、日野坂くんが教えてくれただけです。彼の、お母様のことも……少しだけ」 「……そうか。郁はキミに話したのだね。今まで誰1人として口を割らなかった、あの子が」
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