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「――じゃあ、花巻は教科書が届くまで日野坂に見せてもらってな」
「え」
「ん、イヤか?」
「あ、いえ!私的には光栄なのですが、あの、」
1番後ろの1番廊下側の席というのが災いした。
隣に日野坂くんしかいないせいで、私の意思とは関係なく彼を頼らなければならなくなる。
クラスの全員のうっとりと羨ましそうに見るその目が、いつしか狂気の目に変わりませんようにと願う他ない。
「あ、あの、では潔く教科書お邪魔しますね!」
「いやちょっとは遠慮してもらえます?」
「え」
――なんて人だろう。日野坂 郁。
どんなに人嫌いだと言っても、今日来たばかりの転校生には優しくするもんじゃなかろうか。
そもそもこの学校の校内新聞を読んだ時からおかしいと思っていた。
せっかく新聞部の方々が彼のことを特集してくれているって言うのに、素っ気ないったらない。
かと思えば最後のひと言の欄には長文でツラツラと不満を漏らしていたから、余程周りに集まる人が嫌いなんだと捉えた。
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