金丸

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金丸

 田村の死体は事務所のソファの上に横たわっていた。ダイイングメッセージが金庫の中に残されてあった。『金丸』と万年筆で便箋に書かれてあった。  金無はあの大物議員を連想した。  漢字辞書で調べると『キンガン』とあり、黄金で作った弾丸とある。また、月の別名でもある。  まさか?神戸?  金無の父親は福島県警本部長だ。  LINEしたら、『くだらん推理はいいから仕事を探せ』と返ってきた。    片原と板井は蒲生市にある総合病院の待合室で、大型テレビを見ていた。ここならタダでテレビが見える。患者のふりをしないといけない。片原は咳を ゴホゴホした。板井は腹を押さえ演技をした。 「あー、片腹痛い」  田村が撃ち殺されて、『金丸』ってダイイングメッセージが残されていたらしい。 「ざまぁみろ、俺たちをこんな目に遭わせるからだ」  片原が小躍りした。 「佐川急便絡みかな?」  板井が言った。 「あれから何年たってんだ?確かもう死んでるはずだ」  片原が言った。 「診察はまだですか?どこの科にかかってるんですか?」  ふくよかな若いナースが尋ねてきた。 「大丈夫です、もう治りました」  板井が困ったように笑った。 「え?診察されてないのに?」 「日頃の行いがいいからかな?」  板井は神戸太陽の里って、月の里の系列である老人ホームでバイトしてる。排泄物を焼却したり、いろいろだ。 「何か、俺も治ったみたい」  片原が立ち上がった。 「お友達?」 「35歳」 「お二人とも?」 「うん」  板井が答えた。  そそくさと病院を出た。  
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