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第1話 僕と勇者
「幾斗!起きなさーい!」
幾斗は自分の母親の大声で目覚めた。
「ふぇ?」
寝ぼけ眼で見た時計の針は短針は8を長針は3を示していた。
「8時15分?!遅刻じゃん!」
幾斗は慌てながら学校に行く準備をしてリビングに急いで降りた。
「も~全く…いつになったら遅刻癖が直るのだか…」
そうため息をつきながら言ったのは浅霧幾斗(あさぎりいくと)の母親の紅葉(くれは)だ。
幾斗はテーブルに置いてあったホットドックを口にくわえながら言った。
「ひってきみゃっすっ!!」
そうして勢いよく玄関を飛び出して中学校に向かった。
学校に着くと、正門には竹刀を持った典型的な生徒指導の女の先生が仁王立ちで立っていた。
キーンコーンカーンコーン
そのチャイムと同時に幾斗は正門をくぐった。
「セーフ!」
生徒指導の先生で幾斗の担任でもある近藤が幾斗の腹にパンチを入れて幾斗は気絶した。
気絶した幾斗を担ぎながら近藤は言った。
「セーフじゃねーよ!バーカ!」
そう言いながら幾斗を教室まで運び、席に座らせ淡々とホームルームを始めた。
幾斗が目覚めた頃にはホームルームは終わっていた。
「はっ!ここは?!」
すると、クラスメイトが笑いながら答えた。
「教室だよ!」
幾斗は頭を抱えながら悔しそうに言った。
「くそー!今日もまた近ちゃんに腹パンくらってしまってたか…」
すると、幾斗の隣の席に座っていた男の子が幾斗に声をかけた。
「またかよ、幾斗~いつになったらちゃんと来れるんだよ~」
そう言われた幾斗は笑いながら頭を抱えていった。
「へへっ、いつだろな…?」
そういいながら何事も無く授業をうけて昼休みになったのでいつもご飯を食べている屋上に行くことにした。
「ここが1番涼しいんだよなー」
いつもの様に屋上の扉を開くと、幾斗の目の前には銀色の甲冑を着た女の子が顔をこちらに向けて立っていた。
「女の子?!」
幾斗は後ろに足を下げてその場から逃げようとしたが、まるで時間が止まったかの様に動かなかった。
すると、女の子が口を動かす仕草を見ると何か喋っているようだったのでよく見てみると
、声にならないような言葉でこう言った。
「(待…っ…てる……)」
「ちょっと待って!」
そう言いながら幾斗は足を動かそうとすると後ろから肩を叩かれた。
トントン…
「うわっ!」
幾斗が振り返るといつも昼飯を食べている仲間が不思議そうに言った。
「何ぼーっとしてんだよ…」
「いゃ…変な服の女の子がいたからびっくりしてさ…ほら!」
そう幾斗が指を指す方向には女の子どころか人の姿すらなかった。
「誰もいねーじゃねーか…まだ夢でもみてんじゃねーの?」
幾斗は不服そうに下を向くと最後尾にいた男の子が優しく肩を叩いた。
「僕は信じるよ…幾斗」
「柊哉(しゅうや)!!」
幾斗は嬉しそうに顔を上げると、柊哉は続けて言った。
「その幾斗の夢の話いいエピローグじゃないかー!」
その言葉と共に他の皆も笑いながら屋上に座った。
「柊哉ー!馬鹿にするなよ!!…もぅ」
そういいながら皆に遅れて幾斗も屋上に座って昼ご飯を食べた。
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