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第3話 良くない思惑
案内した先には見知らぬ馬車が村の前に止まっていた。
「こんな所に馬車?」
「村人は全て殺したはず…」
弱腰の男がそう言うと、目の前に行き倒れたように村人の家にもたれる幾人とザークが見えた。
「ヤーレス…村人は全て殺したと言ったが2人残っているがどうなっているんだ?」
目つきの悪い男は弱腰の男ヤーレスに言った。
「ジビエ様私め今初めてこの2人組を見ました…この2人は村人ではなく旅人かと……」
すると目つきの悪い男ジビエは村人の家にもたれると幾人とザークを勢いよく蹴り倒そうとした瞬間ジビエの足は村人の家にもたれて寝ていた幾人の手に掴まれて身動きが取れなくなった。
幾人はジビエを見上げながら言った。
「てめぇらか…人の命をこんなに粗末に扱うやつは……」
ジビエは幾人を見下ろしながら言った。
「人?この村には人など誰一人としていないだろう?」
「何?」
幾人は言った。
「こいつらのようなクソ虫共が僕達と同格だと?笑わせる……この地位高き僕とこいつらを同じ生き物として扱うイカレた野郎は初めて見た!!!」
高らかに手を広げ幾人にジビエは笑いながら言った。
「何がおかしいんだ?」
幾人はジビエを睨みつけながら言った。
すると、ヤーレスは2人に向かって言った。
「この崇高なお方とここの村人が一緒?笑わせるなよ…そんなわけないだろ?ここの村人は誰一人として人なんて崇高なものにはなれない奴らばかりだ!!」
ヤーレスに幾人は言った。
「人が崇高だと?そっちこそ笑わせるなよ…」
「こいつらは捨てられるべき者【イレイズ】なんだよ!!!」
ヤーレスは憤慨しながら幾人に言った。
「だから?」
幾人は何事もないかのように言葉を返した。
「だからって…」
ヤーレスはその返しに困り果てしまった。
ジビエはヤーレスの前に出て言った。
「まぁまぁ…この旅人は常識を知らぬらしい僕がきちんと教えて差し上げよう」
ザークはジビエに言った。
「あなたが殺したんでしょう?ここの村人達を…ただ平凡に必死に生きていたここの村人達をなんの思いもなく殺したのでしょう?」
ジビエは2人を見下すように笑いながら言った。
「あぁ!!!殺したさ!!!殺して何が悪い?勇者候補のこの僕が!崇高なジビエ様が殺してやったんだ!ありがたいと思うのが普通だろうが!!!」
幾人は立ち上がり気だるそうにジビエ達に向かって言った。
「はぁ…眠たいのに…」
そういいながら幾人はカポエラの構えに似た少し不思議な構えをした。
「なんだそのポーズ?」
ジビエ達は分からないまま幾人を見ていると幾人が体を捻りジビエの顔の横から足を当て、隣にいたヤーレスもジビエが倒された反動で倒れた。
(ドサッ)
衝撃でジビエ達は意識を失った。
「まぁ…こんなもんか…」
幾人は言った。
ジークは驚きながら聞いた。
「今の技は?」
「あ〜こっちの世界にはないのか…カポエラって技なんだけど…僕は見よう見真似だから本当の技からは遠いんだけどね」
と少し照れくさそうに言った。
「そうなのですね!びっくりしました急に立ち上がられるから…」
ジークは安心して言った。
「まぁ…このまま後数時間は起きないからこの隙に村を通り過ぎよう」
そう幾人はジークに手を差し伸べながら言った。
「起きないのであればそう致しましょう!」
そう言って幾人に差し伸べられた手をつかみジークは立ち上がり2人で村を抜けることにした。
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