憧れ

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憧れ

俺はあの時の恐怖を思い出した。 琴音がひまわり畑に吸い込まれて見えなくなってしまう恐怖を。 俺は自由奔放に突っ走っていく彼女についていくことができなかった。 彼女に対する嫉妬や余計なプライドを引きずっている俺が追いつくはずもなかった。 格下だと思っていた琴音はいつのまにか見えなくなってしまった。 俺はひまわりが苦手だ。 ひまわりはいつも堂々としていて、少し太陽に似ている。 そしてあの強い日差しを浴びながら君臨している。 それだけではない。 漢字で向日葵、日を向く花と呼ばれるように、あの眩しすぎる太陽を自ら追いかけているのだ。 俺にはそれができない。 あの日光を浴び続けることなんかできない。 だが、琴音にはそれができる。 何も考えずにただひたすらに、純粋に上を目指し続けることができる。 俺はたまに琴音のことが嫌いになることがある。 彼女はいまや百点満点の存在になろうとしていて、誰からも認められている。 そしてついに格上だったはずの俺を、あの小さな体で軽々と飛び越えてしまったのだ。 きっとあいつは最初から俺に憧れてなんかいなかった。 俺なんかよりもっと上の、雲の上の存在を追いかけているのだ。 あいつはいずれ太陽になるだろう。 そんな琴音にどうしようもない憧れを持っているのは俺の方だ。 不器用でも必死で純粋なあの姿をどうしようもなく追いかける俺は何だ。 そんな俺もひまわりだろうか。 いや、身近な存在が大きすぎて日光を浴びることなく腐ってしまった雑草だ。 そんなことを言ったら、あいつはきっと何も考えずに「そんなことない!」って言う。 琴音がいなくなったら俺はきっと腐りきってしまうだろう。 俺にとっての彼女はすでに太陽なのだから。
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