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「明日9時に太陽ヶ丘駅に来て」
ひまわりは咲いていなかった。
当たり前だ。
4月21日、ひまわりが咲くには寒すぎる。
3年前のあの花畑は幻だったのだろうか。
ぐったりとうなだれたつぼみのひまわりが春の強風に煽られていた。
「こんな季節にひまわり畑?」
「琴音…!」
俺はそれだけを叫んでその後の言葉が出なかった。
「みなと、この前はごめん。診断テストのことは忘れて。」
俺はトレンチコートを羽織った琴音を強く抱き寄せた。
「1、俺の恋人の好きな食べ物はレモンタルト。2、俺の恋人の怒っている理由は誕生日を祝う約束を忘れていたこと。3、俺の恋人の好きな場所はひまわり畑。」
「すごいや、百点満点だね」
「百点満点は琴音のほうだよ」
琴音はきょとんとして首を傾けた。
「勉強もできるし明るいし友達も多いだろ。欠点がないって意味だよ」
「ほんとにそう思う?」
ほんとにそう思うか?
だって琴音はいつも…
「いや、琴音は人に甘えすぎ。人を振り回しすぎ。マイナス20点」
「みなとはすぐ怒る。すぐ馬鹿にする。マイナス20点」
「空気読めない。デリカシーない!マイナス20点!」
「みなとあたしのことそんなふうに思ってたの!?マイナス20点!あと、いつも何考えてるかわかんない!マイナス10点!」
「お前の方がわかんねーよ!マイナス10点」
悪口の言い合いでついにお互いの持ち点は半分になってしまった。
「ほら、あたしたち50点でしょ」
「俺たち合わせて100点だ」
いいこと言った!と思ったが琴音は顔を膨らませて叫んだ。
「それあたしが言おうと思ったのに!マイナス10点!」
こんなくだらないやり取りは一日中終わることがなかった。
きっと俺たちは2人合わせても百点満点ではない。
そしてこれからも俺たちは怒涛の日々を乗り越えなければならない。
でも、どんなに厳しい風が吹いたって俺たちはきっと百点満点の太陽を追い続けることができるだろう。
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