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プロローグ
山の奥深く、ゴツゴツとした大小の岩に囲まれた泉に一筋の光が差し込んだ。筋はひとつまたひとつと増えていき、やがて辺り一帯を照らし出した。
「陛下!泉が浄化されています!!成功です!」
「今報告が入りました!魔獣も徐々に落ち着きを取り戻しているようです!」
その声に泉に向かっていた者たちは、徐々に力を緩めていった。
「…ジェネラス様。もう大丈夫です。力を抜いてください。…もう大丈夫ですから。」
ハウズに声をかけられ、一心に泉に力を注ぎ込んでいたジェネラスも辺りの様子を伺ってからようやく力を抜いた。
一帯を眺めると数刻前まで濃い霧が立ち込めていた薄暗い雰囲気や山一体を包んでいた重く息苦しい空気が全くなくなっている。
泉には光が差し込み、苔生した岩は雨粒一つ一つがきらきらと輝いている。枯れ果ててしまっていた木々にぽつぽつと小さな芽が生えている。森が新しく生まれ変わろうとしている。その光景はあまりに美しく神々しく、どんなに腕のいい絵描きでも全て表現することはできないだろう。
「終わりましたね。」
「…あぁ。」
実際には、未だに暴れる魔獣の沈静化や後処理なども残っているが、諸悪の根源を断つことができたことは大きい。
国々を脅かしていた泉は、浄化された今ではこれ以上ないほどの神聖な気を放っている。
平和なこの国が暴れまわる魔獣に侵略され国民たちは恐怖に怯えていた。
それはこの国のみならず、隣国いや世界をも脅かす事態だった。
魔力溜まり
それは世界各国に点在している。
森や動植物、または人間にも少なからず悪影響を与えるものだ。しかし、規模は小さく見つけ次第適切な対処を行えば、さほど危険なものでもない。
寧ろ、多くの生命が生息する森や山にとって生命の循環と等しく必要なことだ。
事態が変わったのは、多くの動植物が凶暴になり人が住む村や街で暴れ始めてからだ。徐々に被害が増えていき、ついには死者まででってしまったからだ。
そんな拡大する被害の対策にいち早く乗り出したのがジェネラス王子だった。
見事魔力溜まりを無効化したジェネラス王子はこの日を境に自国のみならず、他国からも英雄として語り継がれることになった。
これが各国に伝わる英雄物語である。
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