子供達に贈る物語

2/4
前へ
/19ページ
次へ
日もとっくに落ち、静かな廊下からは足音がひとつ。 コツ、コツ、 緑豊かなこの国は、昼間は多くの民が街に集まり活気づく。夜には所々にランプが灯り、暖かい光が人々癒す。人々は笑顔に溢れて、それぞれの生活を平穏に生きている。 しかし、そんな国の国王は書斎にある、使い慣れた机の上に山積みになっている紙の束を思い、深い溜息をついていた。 (子供達はもう寝ているだろうか。書斎に戻る前に寝顔でも見て、癒されよう。) ふと、通りかかった窓の前で足を止める。今夜は新月だろうか、遠くに見える街明かりの上の星達がひときわ輝いて見える。 美しい星々を眺めながらふと浮かんだのは、ニコニコと楽しそうに、こちらが理解できない様な不思議な話を一方的に伝えてくる友の姿。 『王子様の髪の毛は目に悪いけど、星はキラキラしててもは目に優しいよね!』 過去に友人に言われた台詞を思い出し、不満が顔に出てしまう。 かつて人々から賞賛されるほど美しかった髪には年相応に白髪が混じり、顔にはシワも増えてきた。 王様は一つため息を落としてから、早く愛する子供たちに癒さようと子供部屋へ向かう足を再び進めた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加