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滴る天の下
季節外れの寒波が雨粒に運ばれて地上に降り注ぐ。なんの用意もしていない僕の両手が、氷水のような雨粒に打たれてじぃんと痛い。不意打ちの雨とはいえ、天気予報を見なかった自分が悪い、そう自分を言い聞かせ怒りを鎮める。しかし、せっかくの桜ももうすぐ散ってしまうんだろうか。そう思うと途端にこの雨が憎くなる。
大学に着くと予想通り桜は花びらを地面に落としていて、ピンク色の絵の具をこぼしたような歩道は踏みしめる度にぴちゃぴちゃと音を立てた。相も変わらず降り続ける雨は僕の上着に落ちては跳ねて、嘲るように奏でる。もうすっかり僕の雨に対する憎しみがピークに達した頃、そこにいた彼女を見つけた。
彼女は雨が降りしきる中、傘もささずに桜を観ていた。
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