3:孤独を埋めた彼女

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3:孤独を埋めた彼女

 インターホンが鳴った。壁に備え付けられた小型のモニターが美少女の女子高生を映している。  修平は笑顔を溢しながらモニターの有る壁まで歩いて、応答釦を押した。 「おはよう」 「おはよう」 少女もインターホンのカメラを意識して瑞々しい笑顔を作り、黄色い声で挨拶した。 「ちょっと待ってて。すぐに行くから」 トーストは食べ終えている。修平は制服のジャケットを羽織って、卒業証書を入れるための教科書も無い空の学生鞄の紐を右肩まで通す。玄関まで行ってローファーを履き、自宅の扉を開けた。  少女は修平の顔を見ると、嬉しくなって微笑んだ。可愛く見られたくてブレザーの制服をミニスカートにして太ももまで足を出し、黒のハイソックスを穿いている。高校の制服は体の線が見え難いが、足も手も細く華奢なのが分かる。顔は小さく、黒髪はおかっぱにしている。肌は白く、清純な印象を与える。 「ひなちゃん、来てくれてありがとう」 「ううん、私がしゅうちゃんに会いたかったから」  美少女は桜庭日奈。修平は「ひなちゃん」とか「ひな」と呼ぶ。二人きりの時だけ「ちゃん」付けで、学校内では「ひな」と言った。日奈は学校でも外でも「しゅうちゃん」と呼んだ。  二人は幼馴染。中学の卒業式の後、修平から日奈に告白して付き合い出した。  修平が日奈に告白したのも、父の影響があった。 「学生時代に彼女が出来ないと社会人になってもハンデを背負ったみたいに引け目を感じるものだ。だから好きな女の子が出来たら、傷付いてもフラれても良いから兎に角告白だけはするんだ。好きと伝えるだけじゃダメで、ちゃんと『付き合って下さい』と頼むんだ。高校時代に好きな子が出来たら仕方が無いけど、中学時代に好きな子が出来たら卒業式まで待った方が良いな。在学中に付き合い出すと、周りからイジられて面倒だからな。男友達と遊ぶなら小遣いは渡さないが、女の子とデートするなら幾らでも払うぞ。しかし間違っても、子供孕ますのだけはやめろ。人生設計が全て崩壊するからな」  修平は日奈と一緒に学校に通った。二人で色んな場所に出掛けた。だから修平は家族との時間が少なくても寂しくなかったし、勉強も頑張れた。  しかし二人の時間も、もうすぐ終わろうとしている。
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