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何が起こったのか分からずに呆然とする者や頭を抱えてキョロキョロする者がいる中、レイトは走り出した。
つい数分前まで自分たちがいた家に、エルがまだ寝ているはずの家に向かって。
明かりも持たずに走っていったレイトは、強く吸い込んだ空気に咳き込んだ。土ぼこりが舞っていたのだ。
「レイト!」
ライトを持ったハンナが追い付いた。ライトをかざすが土ぼこりのモヤせいでよく見えない。
山から吹き下ろしてきた風がモヤをかき消していく。少しずつ、家があった場所が見えてきて、レイトは息を詰まらせる。
家がなかった。
そこにあったのは横たわる大木と瓦礫の山だった。隣に立っていた枯れ木が倒れ、家を押しつぶしたのだ。
二人とも体が硬直して動かない。唯一動く目で家だった場所を見る。むき出しになった大木の根は、今までその巨体を支えていたとは思えないほどボロボロに腐り果てていた。
「エル!」
我に返ったレイトが瓦礫の山に飛びつく。ほこりを吸い込み咳が止まらず目もまともに開けていられないが、一心不乱に玄関だった場所を掘った。その手はガタガタと震えている。
「レイト、玄関はもう入れない。エルちゃんの部屋は!」
ハンナに声でレイトはすぐに移動した。エルの部屋はまだない。木が生えていた場所とは逆方向の部屋で、いつも母親と一緒に寝ていた。
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