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天使の退場の担当になった男たちはずっと練習を続けていた。劇団の倉庫にあった等身大人形にハンナと同じ重さになるように重りを調整して、何度も何度も引っ張った。
最初はぎこちなく危なっかしかったが、今では手品師も絶賛するほどの手際の良さになった。
大量のライトで目をくらませるのも、彼らが思いついたアイディアだった。
リハーサルを見て呆然としていたレイトに、地上に下りてきたハンナが得意げに言う。
「ね、凄かったでしょ?」
はっ、と我に返ったレイトはぷいっとそっぽをを向く。
「でも危ないんだろ、あれ」
向こうを向いたままレイトはぼそりと呟く。
「大丈夫だよ。二人が布を広げて受け止めてくれるし、一番後ろには分厚いマットがあるから。心配してくれてるの?」
意地悪に訊くハンナをよそに、レイトはどこかへ逃げて行ってしまった。何となく、恥ずかしかったのだ。
ハンナは空を見上げた。空はまだどんよりとした雲に覆われている。
「明日、晴れるといいな」
そう、呟いた。
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