今日の君は

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「いや~、それがさ、すごくお腹空いてて食堂にソッコーで行くことしか考えてなかったんだよね~。それで財布、教室に置いてっちゃって。」 そう言いながら、彼女は僕の方に向かってくる。 「あぁ、なるほどね」 僕はそう答え、カバンを机の横に掛け直す。 「あれ、お昼ご飯は?」 自身のカバンから財布を取り出した彼女が、未だに食堂に向かう訳でもなく、弁当を取り出すこともしない僕を不思議に思ったのか、そう聞いてきた。 「それが、家に財布置いてきちゃってさ。」 「へぇ~。意外とおっちょこちょいなんだね」 「そっちがそれ言う?」 自分のことを棚に上げた彼女は、何故か得意げな顔をしている。 どうしたのか聞こうとするが、 「よし、それなら私が憐れな子羊に天の恵みを授けてあげちゃおう!」 うん。先手を取られた。 「いいの?」 と、一応聞いておく。 「もちろんいいよ!」 満面の笑みでそう言われてしまえば、断るに断れない。 素直にお礼を言おうとするけど、 「その代わりね!?」 うーむ、素早いカウンター。 「来週の英語の課題、ちょっとでいいからさ、手伝ってちょうだい!」 「…しょーがない。さすがに腹減ったし。」 「やった!」 こうなりそうな気はしてた。 「よし!なら食堂行こ!私もお腹空いた!」 彼女はそう言って、教室の扉に向かってパタパタ掛けていく。 「…まあ、いっか」 財布を忘れたことで最初はどうしようかと思ったが、こうなったのなら、これはこれで。 課題もたぶん、ちゃんと仕上がるだろう。 しかし、ね。せっかくだし。 もちろん感謝はしている。 ただ、彼女があまりにも楽しそうだったので、もう少し彼女の反応を見てみたかったので。 そう思って、僕は、待っている彼女の方にゆっくり歩いていっていった。 「遅ーい!」などと言われそうだな、などと考えながら歩いていく。 でもまあ、彼女は彼女らしく、いつも通り、明るく素敵なのだろうな。
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