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「それは事実なのか?」
玉座にどっかりと腰掛けながら魔王デュークは厳かな声でそう問いかける。
「はい。間違いございません。奴は王国のミスリルペニー硬貨を100枚集めるとその魔力により命を1つ増やすことができるのです」
魔術師のシャーロックはそれに対しはっきりと答えた。
「コイン100枚で命が1つ増えるだと?そんな馬鹿げた話が本当にあるのか?」
デュークはそう言って怪訝そうに目を細めるが、シャーロックの表情は揺るがない。
「本当にあるのです。選ばれし者は100枚のミスリルペニー硬貨を集めることで新たな命を得られる、人間界ではこの現象をワンアップと呼んでいるらしいてます」
「うーむ……」
デュークは考え込んでしまった。
デュークにとって目の上のたんこぶとなっているのはマリオンという男。普段は水道管の修理の仕事をしているうだつの上がらない中肉中背の中年の男性なのだが、その男は何故か竜騎士顔負けの信じられないような跳躍力を備えている。そしてそれを武器に多くの魔物と渡り合ってきているのだ。この男がいくつも命を手に入れられるとなったらデュークにとってはかなり厄介なこととなる。穢れた人間どもから保護するために連れ去ってきたスカーレット姫の安否に関わるからだ。
「やはり、もっと精鋭を前線に送らねばならぬのではないか?奴がコインを100枚集める前に」
デュークはシャーロックに対してそう疑義を呈する。これまでマリオンが葬ってきたのはオークロード、ファングラビットなど中堅クラスの魔物。もっと上級のハンマータートルやシャドースケルトンなどを前線に送り出せば、マリオンを葬れる可能性は上がるのだ。しかしシャーロックは頑として首を縦に振らない。
「ですがそれはまずいかと思います。本拠地付近の守りが手薄になればいざという時に対応ができません。それに北方にはまだ我が国と和を結んでいない異民族国家もございます。人間どもだけが敵だと考えるのは早計です」
「ではお前はこの局面、いかに乗り切る?」
デュークが問いかけると、
「簡単な話です」
シャーロックはそう言い、懐から紙を一枚取り出した。
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