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「恐れながら、スカーレット姫にそこまで執着するのはなぜですか?」
「執着して何が悪い?スカーレットが穢れた人間の手に落ち、不幸な生涯を送るのをとどめようとして何が悪い?」
「善悪の話ではありません。私が問いたいのはスカーレットをこのままにしておいてはいけないとの話の根拠はどこですか?ということです」
「それは、シャーロックの進言だ」
「やはり……」
デュークの言葉に、ハーディングは納得の表情を浮かべた。
「妙だと思いませんか?この話、シャーロックが話に深入りしすぎているように私には感じます」
「そうか?」
ハーディングの問いかけにデュークは疑問形で返事をしたが、心に引っかかることが無いわけでもなかった。言われてみればスカーレットを匿ったのも、軍備を増強したのも、前線にはあえて精鋭を送らなかったのも、通貨を改鋳したのもすべてシャーロックの進言によるもの。そして今回の通貨改鋳……シャーロックの指揮下で不気味なほど迅速にことが運んだという事実は覆しようがない。
「もう1つ私には疑問があるのです」
「何だ?」
「今回の通貨改鋳の目的について、シャーロックは何と述べていましたか?」
「それは、ミスリルペニー100枚の魔力によってマリオンがワンアップするからそれを阻止するために、と……」
「それも変な話です。奴は別にミスリルペニーを100枚集めずともワンアップはできるのです。緑色の斑点がついた特殊なキノコを食べたり、地面に着々しないままカメゴンを9回以上連続で踏み続けるなど、様々な方策があることが研究上明らかになっております。むしろワンアップを狙うだけなら、ミスリルペニーを100枚集める方が効率が悪いのでは?という疑問が浮かぶくらいです」
「なんだと?では奴の目的は何なのだ?」
デュークは怪訝そうな顔でハーディングをまっすぐ見据えた。
「仮説に過ぎませんが、私の中で1つ推論があります。3日時間を下さい。裏を取る必要があるので」
「うむ……存分に調べるがよい」
デュークがそう告げると、ハーディングは深々と頭を下げた。
ハーディングが立ち去った後、デュークは窓の外を眺める。灰色の雲が空を覆い尽くしていた。
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