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朝9時、大学生の宗司は友人の要との待ち合わせ準備をしている最中だ。
充電100%になっているであろうスマホを手に取ると、ちょうどメールが届いた。
「誰だ? まさか要の奴、ドタキャンとかいわないよな?」
メールを見てみると要からではなく、知らないアドレスからだ。開いてみると登録した覚えがない出会い系サイトからで、SNSで100万円のお年玉騒動で世間を賑わせた有名な社長からということになっている。
時間に余裕があるからと、宗司は迷惑メールのURLを押して本文を確認した。
『未来ある若者の君に、ちょっとだけ投資をするよ。今日の朝9時45分に金木公園の噴水前においで。うちの秘書から100万円受け取ってね』
「今時こんな分かりやすい詐欺あるかよ。てか待ち合わせ場所と一緒だし……。そうだ」
宗司は早々に支度を済ませると、家を出て待ち合わせ場所へ向かった。
要が来たら、メールを見せてネタにしようと考えたのだ。金木公園に着いたのは9時半すぎ。
「あと15分か、長いな……。ま、ネタだ来てるから実質30分だけど」
宗司は漫画アプリを開いて時間を潰すことにした。
40分になると、足音が宗司に向かって近づいてくる。
「夏目宗司様ですか?」
声をかけられ顔を上げると、スーツを着こなしたグラマラスな美女がいる。ブラウスの胸部分はボタンが今にもはち切れそうだ。
「そうですけど……」
「我が社の社長が、これをあなたにと」
美女は茶封筒を宗司に差し出す。受け取って中を見ると、1万円札がびっしり入っている。
「マジかよ……」
真ん中から1枚引っ張り出して空にかざしてみると、中央に透かしがある。
「すべて本物でございます。それと……」
美女は宗司に身体を密着させると、耳に息を吹きかける。柔らかな胸に、肩を挟まれる。
「こちら、私のプライベート用の連絡先です」
2つ折りにされた紙を渡され、中を見ると携帯番号が書かれている。
顔を上げると、美女と目が合う。
「私のことは、美穂とお呼びください。では、ご連絡お待ちしております」
美穂は妖艶に微笑むと、きびきびとした足取りで公園を去った。
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