迷惑メール

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「いや、遅刻した俺も悪いし……。怒らないからって甘えすぎた。次から気をつけるよ……」 要は未だに項垂れている。 「いいっていいって、俺も言いすぎた。ほら、はやく映画行こうぜ」 「おう、そうだな」 やっと顔を上げた要はまだ気にしているのか、曖昧に微笑む。 ふたりは映画館に行くと、お目当ての映画チケットとポップコーンを買って指定されたスクリーンに入った。退屈な映画の宣伝が流れてから、ようやく映画が始まる。この日観ているのは洋画アクションで、主人公のスパイが敵のボスの愛人が持つマイクロチップが隠された指輪を盗むという話だ。 主人公は相棒と共に様々なアクシデントを起こしてなんとか指輪を盗もうとするが、どれも失敗。 愛人が映画館に入ると、主人公はなんとか彼女の隣に座る。映画に夢中になる愛人の指に伸びる、スパイの手。宗司は反射的にカバンを抱きしめた。布擦れとカバンの中が音を立てる。横目で要を見ると彼は訝しげな顔をし、「どうした?」と口だけを動かした。怪しまれまいと、宗司が愛想笑いをして首を振ると、要は再び映画を見始める。 宗司は安堵の息をつくと、音を立てないようにカバンを抱きしめ直す。 (これじゃ映画も楽しめねぇよ……) 100万円が入っているカバンを、宗司は恨めしげに見た。 結局宗司は100万円が気になり、映画の内容が頭に入らなかった。 「やっぱこのシリーズは面白いよなぁ。次、いつやるんだろ? 撮影とかもう始まってっかな?」 一方要は、無邪気にはしゃいでいる。 「そのうちやるんじゃねーの?」 宗司が適当に返すと、要は彼の顔を覗き込む。 「今日の宗司、なんか変」 じっとり見られ、宗司は目を逸らした。 「別に、普通だから。ほら、飯にしようぜ! 腹減ったよ」 悟られまいと、宗司は早歩きで映画館を出た。
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