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(ダメだダメだ、コイツは銭ゲバの要! こんなに優しいのは、なにか裏があるに決まってる……)
「いや、なんでもないから」
宗司は突っぱねるように言い放つ。
「でも……」
食い下がる要にイラついて怒鳴ろうとした瞬間、大きな物音が聞こえた。
「な、なんだ!?」
驚いてそちらを見ると、目出し帽のふたり組が入ってきた。
「手を上げろ! 財布もカバンもスマホも、全部こっちに投げろ!」
「はやくしろ!」
彼らは機関銃を片手に叫ぶ。
要はすぐにスマホをカバンにしまって投げたが、宗司はなかなか投げない。他の客達も全員投げ終えた。
「おいお前! はやくカバンをよこせ! 撃ち殺すぞ!」
目出し帽は宗司に機関銃を向ける。
「ふざけんなよ……」
宗司は肩を震わせる。
「あ?」
「ここまで来んのに、どんだけ精神削ったと思ってんだよ……」
ボソボソと怒りを呟く。
「何言ってっか聞こえねーよ。オラ、さっさとよこせや」
痺れを切らした目出し帽は、手を伸ばしながら宗司に近づく。
「これは俺の100万円だぁ!!!」
「なんだ、コイツ!?」
鬼の形相で迫る宗司に、目出し帽は後ずさる。宗司が目出し帽にぶつかる寸前、宗司は仰け反った。
胸が焼けるように熱い。スローモーションに倒れるさなか、自分の胸から鮮血が弾け飛ぶのが見えた。
「は……?」
ロクに理解出来ないまま、彼の身体は床に打ち付けられる。
「宗司!」
悲鳴にも似た叫びで、要は親友の名を呼ぶ。
「宗司、宗司! しっかりして!」
胸の熱さは激痛に変わり、視界がぼやける。それでも自分の肩を揺すっているのは、要だと分かった。
「お前こんなガキにビビってんじゃねーよ」
「悪い、助かった。つーかこのガキ、100万円って言ってたよな?」
遠くで目出し帽達の声が聞こえる。
(馬鹿だな、俺……。たかだか100万円に必死になって……。要に八つ当たって、映画も飯も楽しめなくて……。挙句の果てに殺されるとか……)
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