ep.12 Dead・it・be

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ep.12 Dead・it・be

 最後の尸に金属バットを叩きこむと、ハルが大きく安堵の息を吐いた。足元に転がる亡骸へと目を向けて、人だった時に着ていたスーツの内ポケットを探り始めた。嫌な役をやらしてしまっているとは思うが、脳よりも身体が動くハルは進んで行動に起こしている。役割分担だと捉えてしまうのは、冷酷なのだろうか。  ともかく、これで学校に残る尸は全て始末した筈だ。校門を乗り越えてくる奴が居れば話は別だが、映画と違ってこの尸は大したことのない種類のようだった。  異臭を放ち、物音に敏感で、攻撃手段は噛みつき。おれたちは自分達と区別する為、形式上は尸(かばね)と呼んでいる。ゾンビとは違うとは思いたいが、間違いなく尸は映画やゲームに出てくるゾンビのそれだった。自分たち三人の他に人間を見ていないので、伝承みたく噛まれたら伝染するかは分からない。ハルが一度噛まれてはいるが、すぐにエージの能力で治癒している。彼が居なければ味方が一人減ったと思うと、感謝しなければならないと思う。  短い黒髪を揺らして、ハルが額の汗を拭った。細かい金属音に彼の手を見ると、車のリモコンキー。どうやら目的のものは見つかったようだ。ハルは満足げな顔をして、テーブルの上に勢いよく置いた。ガシャン、という悲鳴みたいな金属音が職員室に響く。戦闘後だから気持ちが昂っているのは分かるけど、絶対音感持ちが出していい音じゃない。 「これで全部やな?」  テーブルの上には四つのリモコンキー。学園島のメインの移動はモノレールなので、教職員でさえ車で通勤している人は少ない。この四つのキーの中から、マニュアルマティック・トランスミッションのものを探さなければならない。  おれ、エージ、ハルの三人は改めてリュックを背負い直すと、血まみれの職員室を後にする。割れたガラスが散乱する廊下を走り抜け、倒れた下駄箱の上を通って昇降口を飛び出した。
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