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創世記
「静かに!」
突然少女は叫んだ。ばっと、右手を挙げて。
ややざわついていた教室は一気に静まり返り誰もが少女のほうを振り向いた。廊下側一列目、前から三つ目の座席。その少女は、右手を挙げたまま徐に立ち上がった。教室中の視線が少女を追って少し上を向いた。
「あ、ええと、志儀さん?どうしました?」
授業をぶったぎられた国語教師は怪訝そうに少女に問うた。だがすかさず、
「静かにって言ってるでしょ!」
と、少女は再び叫んだ。
教室は困惑に包まれる。一喝された女性教師は状況がわからずおどおどしている。少女以外の誰しもが互いに顔を見合わせたり、訳が分からないとか、呆れ返ったような表情をしていた。だが困惑も刹那の間、再び皆の視線は少女に注がれる。
「音が聞こえる…」
少女はそう言った。その目は固く閉じられていた。
少女は突如右手を廊下の壁に打ち立てた。
ドスン…と鈍い音が響く。
ピーピーピー…
映像と音声が途切れた。
「あっちゃー。面白いところだったのに。監視してるの、気づかれちゃったかな??」
ぼくはブラックアウトしたモニタを見ながらおどけて見せた。
「そんな風におどけている場合じゃないでしょう、先輩」
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