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「事務の仕事みたい。未経験者でも可って書いてあったから、今野さん電話してみたら?」 「えっ?何て言う中古車屋さん?」 「オートセールスっていうところ」 「あっ知ってる」 そこは大きな中古車屋さんで、車の部品を販売していたり、車検なども行っている場所だ。私は途端にそれに興味を示した。未経験者でも可なら行ってみたい。武田さんは行く気は無いのだろうか。 「何処に求人が出ていたの?」 「ネットで検索すれば簡単に出てくるよ」 「武田さんは応募しないの?」 「私はパソコンとか苦手でね。いざ転職するとなるとやっぱり考えちゃう。気を使いそうだし、今の仕事の方が楽そうだもの」 「そうなの?私には苦痛でしかないのだけど」 「向き不向きがあるのかもね」 そう言って武田さんは持っているスマートフォンを弄ってから、 「ほら、この会社」 と言って求人情報を見せてくれた。画面には 『データ入力』 『電話の応対』と出ている。 パソコンか。高校生の時に授業で習っただけで、そんなに得意ではない。だが、今の仕事を続けるのも嫌であった。そもそも私に合う職業なんかあるのだろうか。もしかしたらどんな仕事も合わなくて、私は社会に適応できない人間なのかもしれない。 そんなのは嫌だ。 「電話してみる。電話番号教えて」 私は武田さんから情報を得てスマートフォンに中古車屋さんの電話番号を登録した。 お腹がいっぱいになると眠気が襲ってきたが、直ぐに午後の1時、仕事開始である。ラインに行って座って仕事を始めた。 「今野さん、もっと早く仕事してくれないかしら」 上司から同じセリフを何回も言われる。私は小さくなり謝るつもりで 「すみま、気をつけま・・・」 と言った。あれっ?「すみません。気をつけます」が言えない。上手く声が出てこなかったのできちんと喋れないのだ。何故だろう。私は不思議に思った。 夕方になり仕事を如何にか終わらせ、私は電車と徒歩で1時間かけて一人で住んでいる狭いマンションに帰る。健康には悪いと思うが帰りに買ってきたコンビニのからあげ弁当を食べ始めた。疲れて帰って来たので、今から夕飯を作る気がおきないのだ。テレビではお笑い芸人がコントをやっている。今一番人気のある芸人さんで面白いのだろうが心から笑えない。仕事の悩みがあるからであろう。一日の事を思い返していると何となく今日の昼間の求人の話を思い出す。 明日、電話してみようか。 ダメで元々だ。受かったら今度は辞めないように頑張ろう。努力してみよう。私は早速だが明日お昼休みに電話する事に決めた。
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