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仕事を終わらせ、家に帰ると宅配便の不在連絡票が届いていた。何かを注文した覚えがないので不審に思いながらも書かれている電話番号に連絡をする。 「遅くなっても良いのならこれから持っていきますよ」 宅配便の業者さんが電話口で答えた。 「はい。昼間は仕事なので家にいないんです。待っていますので宜しくお願いします」 私はスマートフォンを置くと、コンビニで買ってきた明太子スパゲティーを食べ始める。30分位すると玄関のインターホンが鳴った。急いで荷物を取りに行く。大きな段ボールの箱。伝票には今野陽子と書いてある。実家の母からだ。ガムテープを破って中を見る。色とりどりの地元の野菜とインスタントの食料品が入っていた。底を見ると手紙が入っていた。何だろう。中を読んでみる 杏へ 杏がなかなか実家へ帰って来ないので手紙を書きました。 手紙なんて書かないから、文章が下手で御免なさいね。 季節は梅雨に入りましたね。 雨の中見知らね都会で自転車に乗って忙しくしている杏の姿を想像すると切なくなります。 杏が遠くで住むようになってから、もう4年になるかしら。 毎日杏の事を考えています。 元気にやっていますか? お母さんはスーパーでのパートを頑張っていますよ。 お父さんも毎日畑仕事を頑張っているわ。 来月は杏の誕生日ね。 少し早いけれど誕生日おめでとう。 それでね、お母さん思うのだけれど、杏は一人っ子なんだから、そろそろ実家に帰ってきて落ち着く事も考えてくれないかしら。 勿論、無理にとは言わないわ。 そっちに決まった人や好きな人がいるのなら構わないのですよ。 でもきちんと私やお父さんに相談してね。 杏は自分の事あまり話さない子だから心配なの。 それに杏は良い子でしょ。 都会では人に騙されたりとか怖い事もあると思うわ。 毎晩、夜眠れなくて色々想像してしまうの。 たまには連絡ほしいわ。朝でも夜中でも何時でも待っていますからね。   母より 私は手紙を何度も読んで実家を懐かしく思った。実家に帰る・・・か。それを考えていなかった。だが高校を卒業して田舎から東京に近い所に出てきた私はまだ何の成果も無い。帰るのは少し早いかなと思う。後数年は一人で頑張りたい。
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