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月曜日、会社へ行くと、林さんがすまなそうに、
「今野さん、今日残業できるかしら?」と聞いてきた。
「はい。出来ますが」
私は、特に用事がない。
「仕事が溜まっちゃって大変なの。2時間位大丈夫?」
もしかして、私の仕事が遅いせいなのか。不安になり、素直に謝った。
「御免なさい。私、仕事が遅くて」
「いいのよ。今野さんは入ったばかりだもの。じゃあ、残業出来るかな。若い子にあまりお願いしたら悪いと思うのだけど、急ぎの仕事なの。許してね」
ああ、私の仕事が遅いからなんだな。
それから私はなるべくスピードアップしてデータ入力をするが、やっぱり早く出来ない。
その日、私は2時間残業をした。それでも心配で
「すみません、仕事、終わりました?」と林さんに聞いてみた。
「ああ。有難う。助かったわ。後は私が残ってやるから、今野さんは帰ってゆっくり休んでね」
「すみません。お先に失礼します」
何だか申し訳ない気分になった。林さん、何時まで仕事をするのだろう。
その日の帰り道、私は自転車を横に置いて大きな交差点の前に立ち信号を待っていた。英会話スクールが角にある。何気なく英会話スクールの看板を良く見る。そうか!近所にパソコン教室もあった筈である。そこに通えばパソコンが上手く使えるようになるかもしれない。私は早速帰ってからスマートフォンでパソコン教室を検索する。するとこの近所でやっているパソコン教室が1ヶ所あった。
そこへ行ってみよう。
もう転職なんかしたくない。
これ以上履歴書が埋め尽くされるのは嫌だ。
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