田舎から出て来た女の子がかつての自分過ぎて困る大空星南

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田舎から出て来た女の子がかつての自分過ぎて困る大空星南

「ふぁいっおー、ふぁいっおー」  号令に合わせて声を上げスタジアムを駆け回る姿を、頬杖つきながら眺める。 (若者は眩しいねえ……)  三局戦況連盟専用演習場。体力づくりに精を出しているのは国内各地から招集された優秀な生徒たちだ。ここで十五歳から三年間鍛えられ、三局戦況リーグを賑わわせる。 (私もちょっと前まであの中にいたはずなのに、遠いなあ……)  走る生徒たちがスタンドにいる私を見つけ、かけ声を止めてヒソヒソと話す。何を言われているのかは想像がついた。 (はいはい、『遅過ぎた天才』ですよー。それとも『カリスマの燃えカス』のほうかしら)  今でこそこうして練習を眺める姿も我ながら無気力そのものになっているけれど、ああして生徒として汗を流していた時代にはそれはもう熱血していたものだった。  魔王討伐の英雄たちが操った技から生まれた三局戦況、そのプロスポーツリーグ。私もそこに入るつもりでいたからここ連盟の養成学校で訓練を受けていた。誰よりも努力して、誰よりも高い評価を得ていた。  けれど、私はプロ入りできなかった。そのことがショックで以来どうにもやる気が起きない。     
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