田舎から出て来た女の子がかつての自分過ぎて困る大空星南

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 どこのプロチームからも声がかからないまま卒業、見かねた連盟に教育指導員として採用してもらったこともあまり幸運には思えなかった。「燃え尽きた」と囁かれる評判にも反論する意欲さえ湧かないでいる。  正式採用を前提としていたはずの試用期間はこの秋で一年を越え、当初は現場での指導を任されていたのに今では書類仕事の方が多くなっている。次期の契約更新は多分無い。  天才天才と持てはやされたことで調子に乗って――と噂されるけれど、事実は違う。  三局戦況のプロスポーツ発足は五年前と業界が若く、ルールはまだ安定していない。現在の形に落ち着いたのは私が卒業する目前の二年前で、元々戦闘技術であったものが競技としてより洗練され荒っぽさを失いすっかり〝安全なスポーツ〟になってしまった。  プロスポーツというものは試合に観客を集め映像の放映権を販売する娯楽である。そこに安全を求められるのは当然ではあるけれど、私が憧れたのはプロスポーツ選手ではなくて先駆者たる英雄たちだ。だから新しく生まれ変わった競技の中に自分が求めたものを見つけられず、卒業前に進路を選ぶ段階で「もうどうでもいいです」という投げやりな心持ちになってしまった。  養成学校で後進の育成を任されてからもうまくはいかなかった。鳴り物入りでプロデビューするはずがしくじり、訓練校へ戻った私が鳴り響かせたのは「カリスマの燃えカス」という悪評。     
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