第4話 女の本音

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隼人は陽太に飲みに行かないかLIMEしたのだが、帰ってきた返事はめんどい。だったので、こうしてつまみやら酒やら買って彼の家に押しかけた。 「陽太さん、きちゃいました」 「きちゃいました。じゃねぇよ。何しにきたんだ」 「何しにって、決まってるでしょ。飲みにですよ」 「家で一人で飲めばいいだろ」 「そんな冷たいこと言わないで。ささ、飲みますよ~」 「はぁ、めんどい」 彼は迷惑だと思ってることを隠すことなく露骨に嫌な顔をしていたが空気の読めない後輩には効果がなかった。ゲームの世界で言えば彼は厄介な敵キャラだろう。今も人んちなのに勝手に冷蔵庫を開けて酒を冷やしてるし、大量に買ったつまみを机の上にドサリ置いた。山のようにおかれたつまみやスナック菓子にため息をついた。 「何でこんなに買ったんだ」 「いやだって、少ないと陽太さんすぐ帰れって追い出すでしょ、だからたくさん買えば食べきれないし置いてくれるかなと」 「ああ、そのつもりだった。言っとくけど、俺は腹減ってないからな。お前だけで食べろよ」 「いいんですか、陽太さんが好きなかいひもとか鮭とばとかポップコーンもあるんだけどな」 隼人がわざと美味しそうなことを匂わすと、寡黙な先輩は観念したように少しだけなら食べてもいいと言ってきた。どうやら見事ヒットしたらしい。こうなったらこっちのもんだ。 「少しだけだからな」 「まあまあ、そう言わず今日はとことん飲みましょう」 つまみにつられてこいつに言われるがままに酒を飲んでいる。昨日は酔っぱらった女をうちに泊めて今日は隼人がうちにきている。普段なら休みの日は一人でいたい派だが前回も今回も俺は誰かといる。それが滑稽で仕方なかった。自分の中で心境に変化があったのは間違いない。 あの変な女に会ってからだろうか、なんて考えているとこういう時だけ鋭い隼人が聞いてきた。 「誰のことを考えていたんですか」 正直ドキリとした。あの女のことを考えていたなんてばれたらこいつのかっこうの餌食になってしまう。それだけは避けたい俺は平静を装って必死に取り繕うとした。 「お前のこと考えてたんだよ」 「うわ、すいませんけど、俺そっちの気はないんで」 「馬鹿。誤解を招くようなこと言うな。どうしたら帰ってもらえるか考えていたんだ」 「それはご苦労なことで」 クスクス笑いながらスナック菓子をほおばる奴はやけにうれしそうにしていた。 「本当は別な人のことを考えていたんでしょう、やーらし。彼女ですか?」 「そんなのいない」 「陽太さんは彼女欲しいとか思わないんですか」 「思わない」 「気になるひとがいたことは?」 「女子よりゲームと酒が好きだな」 「ですよね。浮いた話一切聞かないですから」 「ほっといてくれ。俺は隼人みたいに社交的じゃないんだ。面倒ごとは御免だ」 「そんなことないっすよ。陽太さんは廃人並みのゲーオタじゃなければルックスいいからモテそうなのに」 何だかさりげなく失礼なことを連発する後輩にもの申したくなったがムキになるとあいつの思う壺なので黙っていようとしていたら思わぬ一言が飛び込んできた。 「先生なんか陽太さんみたいにゲーオタだし、気が合うと思うんだけどな」 「ああ、確かに面白いよなあの子」 「あれ、気になってきました?」
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