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Dolphin
水族館の巨大な水槽の中で二頭のイルカが大きく跳ねる。激しく水しぶきが上がり、隣で見ている晴人が驚いて仰け反る。そんな晴人を見て、私は笑う。そして、二頭のイルカは、笛の音に反応して、飼育員の元へと集う。
「それでは、これからこの二頭のイルカ、ポンくんとピッピちゃんに歌を歌ってもらいます」
飼育員が会場にアナウンスして合図を出すと、イルカたちは再び泳ぎだし、観客席の前で向かい合って立ち泳ぎを始める。そして、もう一度飼育員が合図を出すと、ポンの方がキュウキュウと甲高い鳴き声を上げ始める。
「あっ、歌いだしたよ。見て見て、凄いよ!!」
私は思わず興奮して、隣の晴人の太腿をバンバン叩く。
「痛いよ、美鈴」
晴人が顔を顰める。
「ごめんごめん。でも見て、今度はピッピちゃんが歌い出したよ」
目の前の水槽では、ポンが歌うのを止め、代わりにピッピが歌い出す。やがて、二頭は一緒に歌い出し、飼育員の合図で口と口を合わせる。
「見て見て!! キスしたよ!!」
私は再び晴人の太腿をバンバンと叩いた。
「だから痛いってば!!」
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