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「いや、ルールとか言われても知らないし。だいたいフラスコの魔人って何だよ。わけわかんねーし」
やっと聞きたかったことを言えた僕に、今度は相手が困ったような表情を浮かべた。
「そうと言われてもご主人様……、これ以上何もどう説明すればいいのか」
そう言って、可愛くもないのにひらひらと袖を振る魔人の姿が、余計腹立たしい気持ちを増幅させる。
「ダメだ……これは多分僕の幻覚だ」
きっとそうだ。死にたいと自分のことを追い詰める気持ちが、何とか僕の命を繋ぎとめようとありえない幻覚を見せているのだ。さもなくばこんな話し、聞いたことも見たこともない。
「いえご主人様、これは幻覚なんかではなく現実です。なぜなら……」
そう言って踊るようにクルクルと回り始めた魔人は、両手を広げて決めポーズをすると同時に大声で言った。
「ここに私がいるからです!」
パン、とおっさんの周りで小さな花火が上がる。マジックなら世界的にも注目されそうなその演出も、今の僕にはますます頭痛を意識させるだけだった。
「……」
何を言っても意思疎通できない相手に、僕は諦めたようにため息をつく。現実にしろ、幻覚にしろ、早くこの場所から逃げた方がよい。
そんな危機感を感じながら僕が出口へと歩き出すと、突然慌てた様子で魔人が目の前にやってきた。
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