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ご主人様は、あなたです。
「あーらじまくん! 今日はいくら持ってきたんだ?」
校舎の裏側、いつもなら人気のない場所が、今は珍しく賑わっている。もちろんそれは、良い意味ではないけれど。
言葉を発するよりも先に、腹部に激痛が走り、僕は背中から倒れた。
強烈な痛みに我慢しながら瞼を僅かに開けると、目の前には僕を蹴り上げた先輩の靴底が見える。耳に聞こえるのは、そんな僕を見て面白がる周りの人間の笑い声。
「もちろん、諭吉以上だよな?」
そう言って僕の胸ぐらを力強く掴む相手の顔は、見飽きたほど目に焼き付いている小川将吾。
高校三年生の小川は、この学校では先生や生徒から煙たがられている。一部の、彼と同類のような人間は別として。
「これ……です」
そう言って僕はズボンのポケットから、彼の期待の半分の価値しか持たない紙切れを渡す。「ちっ」と不満を舌打ちに変える彼は、その紙を奪うように僕の右手から握りとった。
「まあしゃーねーか。とりあえず今日はこれだけで許してやるよ。明日、残った分しっかり頼むぞ。もちろん利子付きでな!」
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